冬。
ストーブをガンガン炊いても切った瞬間寒くなっていく室内…
窓際や玄関は外のような寒さ…
いや、洞窟のように冷気を溜め込んだ部屋は外より寒いんじゃないのか…
常に毛布を纏わなければすぐに冷え切ってしまう体…
夏。
冷房を止めるとすぐに蒸し風呂…
窓全開にしてもジトッとした熱風が吹き込むばかり…
寝苦しくて何度も起きてしまう熱帯夜…
築年数の経った家だとこんな光景が日常だったかと思います
自分も今まで住んだ家は全てそうでした。
そしてそれが当たり前だと思っていました。
近年、技術の進歩と相まって、省エネの観点からも高気密・高断熱住宅が脚光を浴びるようになっています。
高気密・高断熱住宅では、一年を通して快適な温度の室内で過ごすことができます。
我が家は一条工務店で新築を建てましたが、一条工務店の売りも高気密・高断熱住宅です。
特に今から家を建てるなら高気密・高断熱住宅にすべきです。
高気密・高断熱住宅とは何か
空気は冷たい方から温かい方へと移動します。
暖かい部屋へ外から冷たい隙間風が入ってくるときのイメージです。
この空気の移動を防湿気密シートなどで防ぎ抑えます(→高気密)。
また、熱は高いところから低いところへと移動します。
暖房を切るとすぐに寒くなってしまう、熱がどんどん逃げてしまうときのイメージです。
この熱の移動を断熱材で防ぎ抑えます(→高断熱)。
即ち、家の中と外の間での熱の移動を極力抑えるようにしたのが高気密・高断熱住宅です。
熱の伝わり方
熱の伝わり方には、対流、伝導、輻射(熱放射)の3つがあります。
これらにそれぞれ対処・活用することで熱の移動を管理し、快適な温度環境を構築できると言えます。
対流
熱が流体(気体や液体)の移動によって運ばれること。
例:エアコンは空気に熱を乗せて強制的に対流を起こしている
伝導
熱が物質よって運ばれる現象のこと。
例:アイスクリームを食べているとスプーンも冷たくなる(それを逆手に、手の温度を伝えて溶けやすくするスプーン)
輻射(熱放射)
熱が放射線(電磁波)によって運ばれる現象のこと。
例:ストーブ、焚き火などにあたると暖かく感じる
対流に対処するために
空気は冷たい方から温かい方へ移動します。
例えば、冬には外から冷たい空気が入ってきたり、夏には涼しい空気が逃げ出したりというのは誰もが実感があるかと思います。
これは対流によって起こる熱移動ですが、この空気の流れを防湿気密シートで遮ることで熱移動を防ぎます。
家全体にラップをするようなイメージです。
この、どのくらい外部と空気の流れを遮れたのかというのが高気密性で、その性能はC値(相当隙間面積)で評価します。
C値が低ければ低いほどすき間が少ない家=高気密な家!となります。
C値とは、家全体の隙間面積を建物の延床面積で割ったもので、例えば、一条工務店の新築の実測平均だと0.59㎠/㎡だそうです。
我が家の延床面積は36坪(119㎡)ですので、上記の実測平均ベースだと、家全体で約70㎠の隙間しかないということになります。
計算式: 70㎠ ÷ 119㎡ ≒ 0.59㎠/㎡
70㎠とは、はがき半分程度の面積です。
家全体ではがき半分程度の隙間しかないというのであれば、家の内外での空気の流れによる熱移動もほとんど無いと想像できると思います。
いやいや、熱移動を遮れるのは分かったけども、はがき半分程度の隙間じゃ窒息してしまうじゃないかと思われるかもしれません。
家に出入りする空気はフィルターと熱交換をとおして計画換気されるので息苦しいなんてことはありません。
ちなみにC値の実測はこのような機械をもって行います。
伝導に対処するために
熱は高温から低温に移動します。
例えば、冬には暖房の熱がどんどん外に逃げ、夏には直射日光の熱が屋内にまで侵入するというのも誰もが実感があるかと思います。
外部の熱を家の内部まで伝えないということが重要になり、この熱の移動を抑えるのが断熱材です。
断熱材による家の断熱性能の差には、断熱材そのものの素材性能と厚さによるもの、充填断熱(内断熱)か外断熱かといった施工の方法によるものがあります。
断熱材には、古くから一般的だったのはグラスウールですが、最近ではより性能の高いウレタンフォームやフェノールフォームといったものが使用されるようになっています。
充填断熱は柱と柱の間に内側から断熱材を充填していく方法ですが、柱部分には断熱材が充填できないのでこの部分から熱損失が生じます。
一方、外断熱は断熱材で家を包み込むように覆う方法で、これだと柱ごと覆うので熱損失が局所的に生じることはなくなりますが、外壁が厚くなるので、施工難易度と費用が高くなると言えます。
一条工務店では、断熱材にはウレタンフォームを厚く、さらに内断熱と外断熱とを併用することで高い断熱性能を発揮し、Q値 (熱損失係数)が高いことを謳っています。
また熱の損失は、壁はもちろんですが、窓も多く熱が出入りする部分です。
従来のアルミ製よりも木製枠や樹脂枠を使用する窓にすることも重要です。
木製や樹脂製の枠だと、触った時にヒヤッとしません。
冬、アルミサッシの窓枠に触るとすごく冷たい。
それはまさに熱がそこから逃げているということ!!
<家の性能を表す値について>
性能を定量的に表すということは数値で表す必要があります。
その数値で表す指標はいろいろありますが、家の性能を表すのによく使われるものをまとめてみます。
断熱材の熱の伝えにくさの指標としてR値(熱抵抗値)があり、これは単位面積当たりの熱の伝わりにくさを示します。
この断熱材の断熱性能を示すR値に、他に使用する部材の材質や厚さを考慮し、壁、屋根、もしくは床等おのおのの断熱性を算出したものがU値(熱貫流率)で、壁等の部材の断熱性能を表すのに使用します。
また、Q値 (熱損失係数)もよく記されている指標で、これは【(各部の熱損失量の合計+換気による熱損失量の合計)÷延床面積】で計算される、家の断熱性能を評価する値です。
さらに、家の断熱性能を評価する値として、Ua値(外皮平均熱貫流率)というものもあります。
こちらも家の断熱性能を評価する指標になりますが、【各部の熱損失量の合計÷外皮面積】で計算され、一見Q値と変わりないように見えますが、換気による熱量の損失まで考えなくてもよく、また、延床面積ではなく外皮面積で割るため、Q値よりも家の大きさによる数値のバラつきが出難くより実態に即していると言えます。
もっとまとめると以下のとおりです。
- C値(相当隙間面積):家全体の隙間面積を表す。低いほど高気密な家。
- R値(熱抵抗値):断熱材の熱の伝わりにくさを示す。高いほど断熱性が高い。
- U値(熱貫流率):壁等の熱の伝えやすさを表す。低いほど断熱性能が良い。
- Q値(熱損失係数):どれくらい熱が逃げにくい家なのかを示す。低いほど断熱性能が良い。
- Ua値(外皮平均熱貫流率):どれくらい熱が逃げにくい家なのかを示す。低いほど断熱性能が良い。※Q値との違いは、外皮面積で割ること
輻射(熱放射)を活用する
例えば、暖炉は薪を燃やしているときに暖かいのはもちろんですが、燃やし終わった後もしばらくは暖かいです。
これは薪を燃やしていた周りのレンガからしばらくは熱が放射されるためです。
火を燃やす、コイルで発熱させるといった直接的な熱源でなくても、蓄積された熱(輻射熱)で暖をとることができます。
しかもこの輻射熱を利用する場合は、物体を介さないので省エネで、じんわり暖かいといった利点があります。
住居全体において輻射熱を利用するには、床や壁等を暖炉のレンガのようにすること、即ち床や壁自体を温め、床や壁から輻射熱を受けることです。
その最適解の一つとしては、住居の大部分を床暖房とすることと考えられます。
例えば一条工務店においては全館床暖房が標準仕様となっています。
我が家の高気密・高断熱性
我が家は一条工務店で2018年に建てた家に住んでいます。
一条工務店も高気密・高断熱住宅が売りですので、以下にその高気密・高断熱住宅に居住してみての実感を述べたいと思います。
まず、高気密・高断熱住宅は夏も快適ではありますが、特に冬に威力を発揮します。
例えば、これは冬のある日の温度計ですが、外が-0.4℃であるのに対し、家の中は22.5℃もあります。
家の中のこの箇所だけが温かいのではなく、全体的にこの暖かさを保つことができます。
(床暖房の設定温度を上げればもっと高くなるし、下げればもっと低くなります。)
ちなみに、この温度計では家の外の子機から温湿度情報を飛ばしています。
我が家は2階リビングですが、1階玄関の外に子機を吊るしていても電波を拾って外の温湿度情報を得られています。
室内温度は問題ありませんが、湿度は38%と低めですので、これは室内湿度管理のできていない良くない例です。
外の湿度が拾えていないくらい乾燥していた日だったんです…
また、高気密高断熱住宅の面白い現象として窓の外側結露があります。
一見、窓の内側が結露しているかのようにも見えますが、結露は外側なんです。
断熱性能のあまりない通常の窓だと、窓自体が冷やされて家の内側の空気も冷やしてしまうので内側に結露が発生します。
しかし、断熱性能の高い窓だと、外側の冷たさを家の内側に伝えない、ということは内側の温かさも外側に伝えないので、窓の外に面している部分だけが冷えて外側に結露を発生させます。
高い断熱性能を持った窓はその分分厚いです。
外側につけたテープのバッテンに指を内側から置いています。
まるで水族館の水槽のように分厚いです。
窓のこの厚さが高い断熱性能の証と言えるでしょう。
デメリットとしてはその分重く、掃き出し窓もそう易々と開けられる重さではないということでしょうか。
しかし、これら気密性の高さと断熱性の高さで、真冬においてもTシャツ短パンで過ごすことも可能で、寒くて何をやるのも億劫という冬のグータラからは解放されたように思います。
(実際にはTシャツ短パンで過ごす設定温度だと暑すぎるので、薄手のカーディガンを1枚羽織れば過ごせるという程度の設定温度にしています)
高気密・高断熱住宅は熱を逃がさないことから冷暖房も効率的に効かせることができるので、省エネ住宅であるとも言えます。
夏は冷房を24時間つけっぱなし、冬は床暖房を24時間つけっぱなしですが、我が家での電気代は最も暑い時期で11,000円前後、最も寒い時期で18,000円前後です。
我が家は関東南部なので、より寒い地域だと冬はもう少し電気代が嵩むと思われますが、冷暖房器具は他に使用していないので、これだけしか電気代がかからない(燃料費ゼロ!!)のは非常に有難いです。
夏に暑い、冬に寒い家なんてもう住みたくないと思うほどに満足しています。
高気密・高断熱住宅デメリット
そんないいことずくめなわけはない、悪い点もあるでしょ、と思われるかもしれませんのでデメリットについても記載します。
①過乾燥
冬は部屋がひどく乾燥します。
外よりも湿度が低くなることもしばしばです。
床暖房は乾燥するなんて言われますが、床暖房が直接の原因ではないと思われます。
湿度とは、その温度の時に最大で空気中に溶けることのできる水分量(飽和水蒸気量)に対して、実際にどのくらいの水分量があるかを%で表したものです。
ですから、空気中の水分量が変わらないまま部屋の温度を上げると、飽和水蒸気量も上がりますので、相対的に湿度は下がることになります。
そのため、単に湿度ではなく、相対湿度と呼んだりもします。
冬の外が寒く乾燥しているなかで、家の中の温度を上げると急激に(相対)湿度も下がるということです。
だから外より湿度が低いというのはある意味自然です。
ただ一方で、(相対)湿度が40%を切るほどに低くなると、肌の乾燥や喉のイガイガ、更には住居の造作材の歪みまでも生じてきてしまうので、適切な湿度を管理する必要があります。
ストーブのように燃焼して温めるようなものであれば、燃焼に際して水蒸気も排出しているため、知らず知らずの間に加湿もしていることになりますが、床暖房では水蒸気を排出しません。
それが床暖房は乾燥すると言われる所以だと思われます。
家の外と中での気温差が大きいことがメリットである反面、デメリットとなっているということです。
②高気密住宅は息苦しい!?
防湿気密シートを張り巡らせて、空気の出入りも管理して、高気密住宅はまるで潜水艦みたいで息苦しいんじゃないかなんて言われたりもします。
国家機密の塊、潜水艦に乗ったことがあるのであれば、それはそれで凄い
実際にそんなことはないのですが、イメージから本当に息苦しく感じる方も一定数いらっしゃるようです。
自分が大丈夫なのかは、建てる前に住宅メーカーが提供している体験施設や、高気密住宅で建てた知人の家に1泊して確かめておいた方が無難ではあります。
高気密住宅は、たしかに開放的で季節を感じるような風が通る家とは違います。
徒然草には「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。」なんて記載もあり、ときにはこの論を持ち出す方もいます。
家の作りは夏の暑さに対処できるのを基本とするべきで、冬はどこでも住めるが、夏に住み心地の不快な家は堪えられないものである、という意味で、家を建てる場合は風通しのよさを第一条件とすべきということです。
ただこれは700年前の話。
700年前から人間は変わっていないかもしれませんが、材料や技術は大幅な進歩を遂げています。
なぜ都合のいい部分だけ700年前の話を持ち出すのかということです。
③過剰スペックなのではないかい?
日本の割と穏やかな気候で、そこまでのスペックは必要ないと言われることがあります。
たしかに、C値においても寒冷地でも1㎡あたり2㎠(C値:2㎠/㎡)で十分とも言われており、例えば一条工務店の0.59㎠/㎡なんて過剰スペックで、その分のお金が無駄とも捉えることができます。
家にどこまでの性能を求めるのかというのは車選びとも似た部分があり、最低限の排気量でいいのか余裕を持った排気量にしておくのかは個別判断で答えがありません。
ただ、車は生活時間の5%程度しか使用されていないとも言われていますが、住居は生活の大部分を過ごす場なので、不満があればストレスを感じやすいと考えられます。
あまりに高スペックな住居は本当の注文住宅でしかお目にかかれないと思うので、一般的な消費者向けの住宅メーカーの中で、選ぶ際に家の性能も気にしてみるというのは、過剰スペックとまでは言えないでしょうし、悪いことではないはずです。
④風邪をひきやすくなる
風邪をひきやすくなるというのは本当にあります。
うちの長男は、冬に私の実家に行くと必ず風邪をひきます。
私の実家も建て直したのでそれほど古くないのですが、高気密・高断熱住宅である我が家に比べると寒く、特にストーブを消している深夜になると部屋の中でも息が白くなります。
生まれたときから高気密・高断熱住宅でまさに温室育ちの長男は必ず風邪をひくことになります。
対して長女は全く風邪をひかないので個体差はあると思いますが。
女は強い。
⑤音や臭いがこもる!?
音や臭いは弱冠、家の中にこもりやすいかもしれません。
音は外に逃げない分、家の中で響くといったイメージです。
臭いはちゃんと換気扇の元で調理をすれば、計画換気となっているのですぐに空気が入れ替わり消えます。
換気扇の無い場所で、シンナーなどの何らかの溶剤を使用してしまった場合は、しばらくシンナー臭さが残ってしまう場合があります。
いや、そもそもシンナーなんかの溶剤は風通しのいい屋外で使用しないとダメだろ
また、外の音が聞こえにくいので騒音には強いですが、市の防災案内が聞こえない、近所で事件があった際に聞こえないといった場合があるかもしれません。
隣家で殺人事件があっても気づけないな…
⑥火が使用できない
灯油のストーブなんかは空気汚染(CO,CO2)の可能性があるので使用できません。
調理もガスコンロを使用することもできますが、IHが推奨です。
暖炉も使えません。
バーナーも使えません。
家の中でバーベキューはできません。
できなくてもそんなに困んなくね!?
⑦高気密・高断熱化している分、建築の値段が高い
厳密に建築面積が同等の建物で、高気密・高断熱の場合とそうでない場合とで比較できていないので推論にはなりますが、一般的な感覚だとわざわざ高気密・高断熱化している方が高くなると考えられます。
ただ、冷暖房含めた電気代や燃料代といったランニングコストは安くなるでしょうし、快適性といったプライスレスな付加価値がありますので、一概に高いからダメとはならないはずです。
まとめ
やはり高気密・高断熱住宅には、デメリットを考慮しても余りあるメリットがあると考えます。
実際に住んでみて、もう寒い家、暑い家には住むことができないと感じるほどですし、家の中が一番快適で外に出たくないとも思ってしまい引きこもりがちです。
真冬にTシャツ1枚で寝て布団も肌掛けだけで快適、なんてもう後戻りできません。
これから住む、建てるということであれば、高気密・高断熱の家も視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。